X308 · KNOWN FAULTS
持病と、それでも
知られた弱点と、その見分け方。隠さずに書きます。理解した上で、それでも乗るために。
古い車に持病はつきものです。X308にも、オーナーの間でよく知られた弱点がいくつかあります。脅すためではなく、買う前に知っておけば備えられるものとして、代表的なものを並べます。いずれも対処法がわかっているものです。
ニカジルシリンダー問題
2000年7月以前の初期エンジン
X308で最も有名な持病が、これです。まず大前提として、これはX308が積むV8エンジン「AJ-V8」の初期型に起きた問題です。前型のX300は直列6気筒とV12で、このV8を積んでいません。だからニカジル問題とは無関係です。同じAJ-V8を載せたスポーツカーのXK8と共通の話、と捉えると正確です。
初期のAJ-V8は、アルミシリンダーの内壁に「ニカジル」というニッケル-ケイ素合金をコーティングしていました。耐摩耗性と低摩擦に優れた、モータースポーツ由来の技術です。ところが落とし穴がありました。開発テストは硫黄分の少ない英国の燃料で行われていたのに、北米などでは硫黄分の高い燃料が流通していました。これが硫酸を生んでコーティングを侵し、圧縮が抜けてエンジン不調に至るケースが報告されたのです。症状は始動不良、アイドリングの不安定、パワー低下、最悪はエンジン全損でした。
では日本ではどうだったのか。苦情は特に北米のオーナーから多く出ました。地域の燃料事情に左右される問題なので、日本で北米と同じ頻度だったとは限りませんが、「日本では起きない」と断言できる資料があるわけでもありません。確実なのは、個体ごとにエンジン番号で確認することです。ちなみにこれはジャガーだけの話ではなく、同時期のBMWやポルシェでも同種のトラブルが起きた、業界横断的な問題でした。
そして大事なのは、すでに解決済みだということ。ジャガーは2000年7月(2001年モデルイヤー)の導入時に、ニカジルから従来型のスチールスリーブへ切り替えました。フォーラムの記録では、最初のスチールライナー・エンジンの製造は2000年8月18日とされています。それ以降の個体は、この問題とは無縁です。
| 見分け方 | ニカジル(旧) | スチール(新) |
|---|---|---|
| モデルイヤー | 1997–2000 | 2001以降 |
| エンジン番号 | 0008181043 未満 | 0008181043 以上 |
年式だけで判断せず、エンジン番号で確認するのが確実です。保証期間内に交換された個体には、クランクケースに「Genuine Jaguar Exchange Product」のプレートが付きます。
ZF製5速ATの劣化
自然吸気モデルが積むZF 5HP24は、バルブボディの亀裂やクラッチ部品の破損が知られた弱点です。変速の遅れやショックが出てきたら、早めに点検を。放っておくと修理は数十万円規模になりやすい箇所です。逆に言えば、症状の出方がわかりやすいので、試乗のときに変速の感触を確かめておけば、ある程度は見抜けます。
タイミングチェーンテンショナー
樹脂製テンショナーの経年劣化は、AJ-V8の定番です。割れるとチェーンの破断からバルブ損傷に至ることがあるため、予防交換が定石とされています。年式を問わず起こるので、整備履歴に交換記録があるかどうかは、中古個体を選ぶときの大きな判断材料になります。
オイル漏れ・電装系
ヘッドカバーやオイルパンからの滲み、ホイールスピードセンサーやメーター照明などの電装系の小トラブルも定番です。一つひとつは致命的ではないものの、積み重なると維持費に効いてきます。この個体で実際に起きたことは、世話の記録に正直に残していきます。
見るべき場所がわかっていれば、怖さはだいぶ減る。
こうして並べると、面倒な車に見えるかもしれません。確かに、新しい国産車のようには手がかからない、とは言えない車です。でも持病は、裏を返せば「どこに気をつければいいか」がはっきりしている、ということでもあります。見るべき場所がわかっていれば、怖さはだいぶ減る。
弱点を知った上で、それでも乗りたいと思えるかどうか。X308という車は、最後にそこを問うてくる気がします。私の答えは出ています。だからこのサイトを作っています。
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緑と青。メディアが混同してきた女王の2台を整理します。